■ 工 具 箱 ■  (3) 穴をあける−1

■穴を開ける方法
  人力で使う簡単な道具にあって「穴を開ける(穴を生成させる)」方法には、(1)圧力だけによるものと、(2)刃を使うもの、とがあります。
(1)は最もシンプルな方法で、鋭利な先端に圧力を集中(突き刺す)するもので、穴は周囲に圧縮されるか、反対面に押し出されてできます。道具としては「千枚通し」や「針」などがあり、かける圧力に限界があるため穿孔対象は薄板に限られます。 
(2)は、「刃」を回転させて切り進むことにより穿孔するもので、比較的厚いものにも穿孔することができます。道具としては、「キリ」や「ドリル」などがあります。
  なお、「穴」とは厚みのある物体の一部に生成された空間を指し、「穴を開ける」とはこの空間を生成することです。また、穴が物体を突き抜けている状態を「貫通(貫通穴)」、途中までの状態を「めくら(めくら穴)」といいます。(例: 鉄砲傷の「貫通銃創(かんつうじゅうそう)」「盲管銃創(もうかんじゅうそう)」などの表現はよく目にしますね)

●ドリル針●
ドリル針はナイフなどと同じような刃物です。先端から螺旋状に溝が掘られていて、この溝と外周の接線が全て刃となっています。先端は低い円錐状で、この部分の刃が穿孔対象物に切り込み、切りカスはドリルの回転に従い、溝に沿って後方へ送られ、排出されます。(右写真は3ミリ径のドリル針の刃部)
切削に用いるのはもっぱら円錐状の先端部で、ここが切れなくなると、ドリルとして寿命が尽きたことになります。3ミリ以上のドリル針では、研ぎ直すことができますが、それ以下では、ほとんど不可能なので、カッターナイフのように使い捨ての消耗品と理解する必要があります。

ドリル針はプラスチックモデルの工作には必需品です。いろいろなサイズ(径)が必要になることから、最初は、1本ずつ揃えるよりセットを購入するのが、手っとり早く安上がりだと思います。小径(0.3、0.4、0.5、0.6、0.8ミリΦ)はタミヤから出ていますし、1.5ミリΦ以上はたいていのホームセンターで、セットされたものを入手することができます。
  ■ドリル針セット
左:タミヤの小径ドリル針セット(0.3〜0.8)を2個購入し、ケースを利用して、0.7、0.9〜1.5ミリΦを補足したもの。
右:ホームセンターなどで売られている1.5ミリΦ〜6.5ミリΦのドリル針セット。モーターの径が4ミリと6ミリなので、このセットは持っていたいものです。

■ピンバイス
ピンバイスは、針やドリル針のような細いもので工作するとき、扱い易いように付ける柄です。プラスチックのような柔らかい材質のものに、比較的精密な穿孔をするときは、このピンバイスを使うと便利です。たいていは、多少の調節が効く可変のコレットを複数装備していて、3ミリΦ以下の、ほとんど全ての径のドリル針を取り付けられるようになっています。
●ピンパイスのタイプ: 上写真(1)は棒状で、両端にドリル針をくわえることができます。 (2〜4)は、時計用ドライバーのように頭部が空転するタイプで、頭部に圧力を加えた状態でドリル針を廻すことができます。【このタイプが使い易いようです。】(2)はまさに時計用のドライバーの先端をドリル針をくわえるチャックに換えたもの。 (5)は柄の途中に空転する管(スリーブ)を付けたもので、スリーブを支えて頭部に回転の力を加えて使うことを目的としたもの。【使い勝手がよくありませんでした。】
●ピンバイスの使い方: 利き手側でピンパイスを保持し、対象物はその反対側の手を使い中空で保持して、「ピンバイスの頭部を指の股で押しつけるように圧力をかけながら、親指と人さし指・中指で柄を廻す」というのが、そう正確性を要しないときの一般的な使い方だと思います。 ある程度精密な穿孔をする場合は、対象物を台などの上に穿孔面を水平に保持し、ドリル針が垂直になるように当て、時計用ドライバーを使う要領で、人指し指で軽く圧をかけて親指と中指でピンパイスを回転させます。

●アダプターチャック
ほとんどのピンバイスは0.2φ程度までのドリル針をくわえることができますが、くわえ部の直径とドリル針の径に差がありすぎると、細かい作業のときなどに少しやりづらいことがあります。そんなときに使えるのがこのアダプターチャックです。 とは云え、細身のピンバイスと価格がそう違わないので、「ピンバイス用のアダプター」としてはあまり意味がないようです。

■径の大きいドリル針をくわえる
フライト・ポジションでモーターを取り付けるためには、4ミリとか6ミリ径のドリルを多用しますが、3.5ミリ径を超すドリル針用のピンバイスが入手できないのでその代用を探してみました。
●ハンドタップの柄
工具箱の中でふと目にとまった超小型のハンドタップの柄に取り付けてみました。最大5ミリ径ぐらいまでしかくわえることが出来ないので4ミリモーターの取り付けまでとなります。くわえ部分がハンドタップの角柱に合うようになっているため、円柱のドリル針は空転しがちで、あまり大きな力を加えることができないのがいま一つというところです。 【ハンドタップ】

●ドリル用のチャック
木工用旋盤の支え側に使っているチャックが容易に外せるので利用してみました。6ミリ径のドリルも楽にくわえ、しっかり固定できます。ずしっと重く、あまり細かい作業には向きませんが、モーターの取付け穴を開ける程度ならけっこう使えます。
 【木工用旋盤(ウッドレース)】

■刺深度調節アダプタ
ハンドドリルに付けてドリルの穿孔する深さを規制するもので、プラスチック製のものです。電動ドリルにも、注意すれば使用できそうですが、電動にはやはり金属製のもののほうが安心です